【信憑性ゼロ】前回の値も修正され、信用できない雇用統計の発表を鵜呑みにしてはいけません…

週刊投資経済
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こんにちは、くろいずです。

毎週土曜日に更新する、投資に関わる経済ニュースをお届けします。
1週間内に発表された経済指標などを定期的にウォッチし、今後の経済動向について解説します。

※投資を推奨する記事ではございません。投資は自己責任・自己判断のもとよろしくお願いします。

2024年9月2日~2024年9月6日の経済情報

2024年9月 ISM景気指数が発表!
  1. 製造業景況指数(Manufacturing Purchasing Managers’ Index, PMI): 製造業の生産活動、新規受注、在庫、雇用などの項目について調査し、それらの指標を総合的に評価したものです。PMIは、50を基準として、50以上で景況の改善を示し、50以下で景況の悪化を示します。
  2. 非製造業景況指数(Non-Manufacturing Purchasing Managers’ Index, NMI): 非製造業(サービス業、建設業など)の新規受注、ビジネス活動、雇用、在庫などの項目について調査し、それらの指標を総合的に評価したものです。NMIも、50を基準として、50以上で景況の改善を示し、50以下で景況の悪化を示します。
ISM景気指数今回(8月)市場予想(8月)前回(7月)
製造業47.247.546.8
非製造業51.551.351.4

今回のISM景気指数の結果では、製造業のみが相変わらず50を下回る結果となり、非製造業が景気を牽引する形でヘッドライン上の数値はなんとか持ち堪えているように見受けられます。前回と同様に、少し中身の数値も深掘りしてみます。

製造業内訳今回(8月)前回(7月)
新規受注44.647.4
雇用46.043.4
非製造業内訳今回(8月)前回(7月)
事業活動・生産53.354.5
新規受注53.052.4
雇用50.251.1

中身を見てみると、雇用に関しては製造業の方が非製造業よりも前回から良好になっていることがわかります。しかし、ここ2年ほど製造業指数が50を下回っていることを考えると、今後のアメリカ経済は大きな負債を抱えながら走っていることは、間違い無いでしょう。

なぜ、製造業が重要なのかというと、経済の土台は製造業だからです。これは、バラッサ・サミュエルソン効果という経済学の理論があり、簡単にまとめると製造業などの貿易財の生産性が高い国は、経済全体の物価水準が高くなるというものです。これが、現在のようなテクノロジーでも貿易として稼げる時代にそのまま適応されるわけでは無いと思いますが、やはり基本は製造業ということでしょう。

この辺りの経済理論については、以下の本にて紹介されていました。読み応えのある本ですので、興味がある方はぜひご購入してみてください。

製造業が強く、貿易財の生産性が高かった国というと、かつての日本を想像してみてもらえると良いでしょう。しかし、その後日本ではなく、中国に世界の工場が拠点となり、中国で物を作り中国から輸出されることになると、みるみる日本は産業の空洞化が進み、経済が停滞してきました。それとは裏腹に、中国は自国の経済をみるみる発展させ、世界のGDPでは日本を追い抜くほどに成長しました。

この事実だけをみても、やはり自国の製造業が強いことは経済的に重要だと言えます。そして、現在のアメリカでは製造業はかつてほどの強さはありませんが、ITテクノロジー分野での貿易財が強すぎます。

例を挙げると、まずスマホは基本的にiOSかAndroidを世界中の人間が使っていますし、PCはWindowsかMacOSでしょう。そして、動画コンテンツもYoutubeやNetflixを見る人が増えています。また、Webサービスを立ち上げる際に使用されるサーバーは、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)やGCP(グーグル・クラウド・プラットフォーム)などが利用されているでしょう。

このように、現在のアメリカでは製造業の代わりを非製造業であるIT産業が貿易財を生み出しています。2010年代から、国としてIT産業を育ててきたアメリカですが、ここにきて世界のシェアをとってしまった事で次なる成長が見込めない状態です。さらに、自国の製造業も非常に景気が悪いため、今後の先行き見通しは厳しく見積もっておいたほうが良いでしょう。

そういう意味では、「アメリカに強い製造業を取り戻す!」と言っているトランプ元大統領の方向性は、理にかなっているのかもしれませんね。

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2024年9月 雇用統計が発表!
  1. 労働力参加率(Labor Force Participation Rate): 労働力参加率は、ある国や地域において、労働可能な人々が労働市場に参加している割合を示します。就業者や求職者の人数を労働力として計算し、総人口に対する割合として表されます。
  2. 失業率(Unemployment Rate): 失業率は、労働市場において仕事を求めているが見つからず、かつ積極的に求職している人々の割合を示します。一般的に、失業率が低くなると、労働市場が健全であることを示し、経済の好調を反映する指標とされています。
  3. 雇用創出数(Employment Creation): 雇用創出数は、ある期間(通常は月次または四半期)における新たに創出された雇用の数を示します。これは、新たな雇用契約や雇用拡大によって生まれた雇用機会の数を指します。
雇用統計今回(8月)市場予想(8月)前回(7月)
雇用者数14.2万人16.0万人8.9万人
修正前:11.4万人
失業率4.2%4.2%4.3%
平均時給3.8%3.7%3.6%
労働参加率62.7%62.7%

前回の雇用統計ではサームルールが発動し、これからリセッションとなるシグナルが点灯したところでした。しかし、今回の雇用統計では前回と違い、失業率の上昇が見られず平均時給も上昇しております。

ただ、前回の雇用者数の発表では11.4万人に対し、下方修正が入り8.9万人と修正されています。このように、下方修正されることが当たり前になった指標に信頼性はなく、今後の経済を見る上でも発表された値よりマイナス方向に見積もっておく必要があります。

そして、これからリセッションに向かう上では間違いなく失業率が上昇します。もう一つ付け加えると、平均時給も下落します。これらは理屈を考えてみればわかりますが、企業の売上が立たず無い場合、アメリカでは従業員に負担が強いられます。日本のように雇用が守られている国では無いからです。

つまり…

  1. 企業の売上が立たず、資金繰りが厳しい
  2. 従業員の残業時間や給料をカットする(平均時給の下落)
  3. それでも足りない場合、従業員をリストラする(失業率の上昇)

といった具合に、経済の悪化が進んでいくことになります。

このサイクルに入ってしまった場合、抜け出すことは非常に難しく、アメリカの国民性を考えても自己主張を強くすることで自分の立場を守るので、企業側との交渉が進まないところ多くなるでしょう。雇用の流動性が生み出した、強烈な自己責任の社会では自分の主張を押し通すことが正当化されるからです。

こうなった場合、企業に価値があれば海外企業などから買収の提案などがあり、従業員の雇用や企業の倒産からは守られるでしょう。その良い例が、日本製鉄によるUSスチールの買収です。

買収されるほどの価値がある企業では、買収によって生き残ることができるかもしれません。もちろん、そのような企業ばっかりでは無いので、景気が悪化してしまうと倒産してしまう企業が多発するでしょう。そうなると、失業率の上昇は免れないためアメリカ経済はリセッションへと陥ることになります。

そのラインを見極めるためにも、雇用統計などの経済指標は大事なのですが、度重なる修正修正によって正しい数値が発表されるまでに時間がかかるため、あまり楽観的に見積らないほうが良いでしょう。

今後も、良い値が出たとしても楽観的に相場の動きへついていくのは危険だと思います。注意して相場と距離感を保ちましょう。

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