【米国経済の歪み】失業率は最低水準なのに、複数の経済指標が軒並み悪化

週刊投資経済

こんにちは、くろいずです。

毎週土曜日に更新する、投資に関わる経済ニュースをお届けします。
1週間内に発表された経済指標などを定期的にウォッチし、今後の経済動向について解説します。

※投資を推奨する記事ではございません。投資は自己責任・自己判断のもとよろしくお願いします。

2025年6月2日~2025年6月6日の経済情報

2025年6月 ISM景気指数が発表!

  1. 製造業景況指数(Manufacturing Purchasing Managers’ Index, PMI): 製造業の生産活動、新規受注、在庫、雇用などの項目について調査し、それらの指標を総合的に評価したものです。PMIは、50を基準として、50以上で景況の改善を示し、50以下で景況の悪化を示します。
  2. 非製造業景況指数(Non-Manufacturing Purchasing Managers’ Index, NMI): 非製造業(サービス業、建設業など)の新規受注、ビジネス活動、雇用、在庫などの項目について調査し、それらの指標を総合的に評価したものです。NMIも、50を基準として、50以上で景況の改善を示し、50以下で景況の悪化を示します。
ISM景気指数今回(5月)市場予想(5月)前回(4月)
製造業48.549.348.7
非製造業49.952.051.6
製造業内訳今回(5月)前回(4月)
新規受注47.647.2
雇用46.846.5
非製造業内訳今回(5月)前回(4月)
事業活動・生産50.053.7
新規受注46.452.3
雇用50.749.0

いよいよトランプ関税の影響も出てきたところで、ISM景気指数としては悪い結果となりました。現在は、アメリカ全土で10%の基本関税が課されている状態で、この悪化っぷりです。今後の関税政策で、鉄鋼関連の輸入関税や中国に対しての34%関税などがかかってきた場合、確実に景気後退→リセッションへと進むことは間違いないでしょう。

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現在のアメリカは、高金利による経済への締め付けが強いので、景気があまりよくありません。そして、景気が悪くなれば金利を引き下げて経済を刺激するのが筋です。前回のPCEデフレーターを紹介する記事でも記載しましたが、ようやくインフレが落ち着き始めて金利引き下げの方向へと進むことができるかもしれないというタイミングで、トランプ関税による物価上昇です。これでは、金利を引き下げるとさらにインフレが止まらなくなり、低金利高インフレで富裕層以外は生活できなくなってしまいます。富裕層は、インフレ経済になれば保有している金融資産が成長するので、インフレなど関係なく生活できますが、金融資産を保有していない人々からすれば、インフレはただの害悪です。

↓PCEデフレーターを紹介した記事

ただし、アメリカはここ数ヶ月でインフレから景気後退へと転換点を迎えているような気がします。これまでと違って経済が良い状態を保つことは難しいでしょうし、高金利で痛めつけられた経済がトランプ関税によって回復することも難しいとなると、やはり景気後退へと進むしかないように感じます。2010年代から続いた、アメリカの強い経済がいよいよ終わりを迎えようとしているのではないかと思います。これからは、アメリカ一辺倒の投資ではなく、分散投資の重要性が理解される時期なのかもしれません。

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2025年6月 雇用統計が発表!

  1. 労働力参加率(Labor Force Participation Rate): 労働力参加率は、ある国や地域において、労働可能な人々が労働市場に参加している割合を示します。就業者や求職者の人数を労働力として計算し、総人口に対する割合として表されます。
  2. 失業率(Unemployment Rate): 失業率は、労働市場において仕事を求めているが見つからず、かつ積極的に求職している人々の割合を示します。一般的に、失業率が低くなると、労働市場が健全であることを示し、経済の好調を反映する指標とされています。
  3. 雇用創出数(Employment Creation): 雇用創出数は、ある期間(通常は月次または四半期)における新たに創出された雇用の数を示します。これは、新たな雇用契約や雇用拡大によって生まれた雇用機会の数を指します。
雇用統計今回(5月)市場予想(5月)前回(4月)
雇用者数13.9万人12.6万人14.7万人
修正前:17.7万人
失業率4.2%4.2%4.2%
平均時給3.9%3.7%3.9%
労働参加率62.4%62.6%

今回の雇用統計も、市場の予想を超えて悪くはない結果となりました。しかし、発表後に毎回下方修正されているため、実際はこの数字よりも下回っていると考えたほうが無難です。民主党のバイデン政権時代は、雇用統計の下方修正が当たり前でしたが、共和党のトランプ政権も下方修正を繰り返すようになり、数字の信憑性が薄れつつあります。そして、失業率は依然として4%を超えており、まだまだ安心できない領域にいることは間違いありません。

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上記は、1990年代からのアメリカの失業率の推移です。現在の4.2%は過去30年ほどで、比較的に低い水域にあります。しかし、ここまで低い水域にあるにもかかわらず、アメリカの経済が失速気味なところが疑問に残ります。本当に失業率が低くて、経済が回っているのであれば、PCEデフレーターもISM景気指数も良い結果が出るはずです。しかし、インフレは鈍化しつつあり、景気は悪化しているのが現状です。失業率の一点だけを見ると過去最低水準ですが、複数の経済指標を見ると過去最低水準の失業率なのに、景気が悪化しているという矛盾が見えてきます。

当ブログの予想としては、ここから失業率上昇でFRBが慌てて金利を引き下げて、リセッションというシナリオをメインシナリオとして見ていますが、発生時期はわかりません。ただ、ここから失業率が下落していくというのは考えにくく、一度は経済がクラッシュすることを考えて置いた方が無難でしょう。アメリカの経済は、失業率が大きく跳ね上がった後に緩やかに下落した時に株価が継続的に上昇します。なので、失業率が上昇した後に、緩やかな下落をしている時に投資するのがベストです。そして、失業率が最低水準まで来たら、次は上昇トレンドへと進んでいくので警戒が必要になります。ある意味、失業率のトレンドを見ることで米国株のトレンドがわかると言っても過言ではありません。

上記のチャートは、青が失業率で緑がナスダック100指数です。コロナ以降のばら撒きで、過去のトレンド通りに動かなくなったのは上記のチャートを見れば明らかですが、そのツケは大きな経済クラッシュを引き起こして払わされることになります。歪みを生み出したら、必ず解消するために大きく経済が動いてしまいます。その歪みの解消へと近づいているので、今のアメリカ株への投資は非常に慎重になるべきです。そのタイミングが来たら、これまでと比べ物にならないぐらいの大きなショックとなるでしょう。投資は余剰資金で行い、投資先を分散させておくことは必須です。今後のアメリカ経済は、要注意です。

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